M&Aにおける「表明保証」と「特別補償」

M&A(企業の合併・買収)において、契約書に登場する「表明保証」と「特別補償」。どちらも、買い手が安心して取引できるようにするための条項ですが、意味合いや役割には明確な違いがありますので、今回はその点に触れてみたいと思います。

表明保証とは?

表明保証とは、売り手が「現時点において、会社や事業の状態がこうである」と事実を保証するものです。たとえば、「会社に未払いの税金はない」「訴訟リスクはない」などといったものが代表例です。

買い手は、売り手の表明が正しいことを前提に企業を評価し、買収価格を決定します。そのため、もしあとになって表明と異なる事実が発覚した場合、買い手は損害賠償などを請求することができます。

ここでのポイントは、「事実ベースの保証」であること。売り手が知らなかったことであっても、事実と異なれば責任が問われるケースもあるため、慎重な確認が必要です。

特別補償とは?

一方、特別補償は、「特定のリスクや問題が起きた場合には、事前に合意した補償を行う」と旨の取り決めを指します。例えば、「現在係争中の訴訟で損害が出た場合には、売り手が補償します」といった具合です。

こちらは、すでに売り手も買い手も“認識しているリスク”を対象にしており、そのリスクが将来現実になったときに、補償の範囲や金額についてあらかじめ合意しておくものです。したがって、デューデリジェンス等を通じて具体的に認識されたリスクについて手当てするという意味合いが強いかと思います。

M&Aでは、情報の非対称性(買い手より売り手の方が会社の情報に詳しい)が大きな課題です。この2つの条項を適切に使い分けることで、買い手は安心して取引ができ、売り手も不要な責任を避けることができます。

【一日一新】
東日本橋駅

未分類

Posted by higuchi