退職金スキームの留意点
M&Aにより株式譲渡を行う場合において、譲渡対価のすべてを株式譲渡にするのではなく、一部退職金を混ぜることによって売り手。買い手双方にメリットをもたらすことが可能です。これは退職金スキームともいわれているものですが、退職金にかかる税務上の取り扱いについては留意点もあるため、この点にフォーカスしてみたいと思います。
退職金の支給を受ける際、「退職所得の受給に関する申告書」を支払者が退職者から受け取っているか否かで税務上の取り扱いが変わることとなります。
受け取っている場合、退職者の税金計算上、退職所得控除が適用され、下記の計算式により求められる金額を退職金から控除したうえで税金計算が行われ、源泉徴収されます。
勤務期間20年以下:40万円×勤務年数
勤務期間20年超:800万円+70万円×(勤務年数-20年)
一方、「退職所得の受給に関する申告書」を受け取っていない場合、退職金の額に20.42%を乗じた額が源泉徴収されることとなります。
したがって、控除がない分、上記申告書を受け取ってない場合のほうが源泉徴収額が多額になることが想定され、場合によっては退職者の資金繰りにも影響します。(ただこの場合も、年度末に確定申告をすることで、受け取っている場合に課される税金と同等の負担になるよう調整されます)
もう一点、この申告書の提出に加えて、住民税の取り扱いについても留意する必要があります。
住民税は翌年度に納付するイメージが強いかもしれませんが、退職金にかかる住民税については、源泉徴収時に所得税とあわせて徴収されるため、翌年ではなく当年度課税となります。
例えばM&Aの場面で、売り手の資金繰りを意識して退職金支給後の手取り額をシミュレーションするケースなどもあるかと思いますが、その際は上記の退職所得控除の適用可否と、住民税負担について忘れずに検討する必要があります。
【一日一新】
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