自己株式の取得と資本金等の額
企業が自己株式を取得するケースについて。税務上、自己株取得は資本の払い戻しとしてとりあつかわれ、うち一定部分について「みなし配当」として扱われることがあります。これは、取得対価のうち、資本等の払戻しに該当しない部分を配当とみなして課税する制度です。
みなし配当額は、以下の式で計算されます:
みなし配当額=自己株式取得対価の額 - 資本金等の額からの減少額
ここでいう「資本金等の額からの減少額」は、取得した自己株式に対応する資本金や資本剰余金(資本金等の額)を按分して求めた額を指します。
例えば、全株式数の10%を自己株取得した場合、その10%に相当する資本金等の額が減少したとみなされます。残りの部分がみなし配当として、株主に課税されることになります。
この取得によって、会社の資本金等の額は対応する部分だけ減少します。これはあくまで税務上の概念であり、会社法上の資本金そのものが減少するわけではありませんので、自己株取得によって、会計と税務で純資産の構成に差異が生じる可能性がある、ということになります。
その後、自己株式を第三者に譲渡した場合、税務上はその譲渡価額に応じて資本金等の額が増加する可能性があります。
以下のように整理できます:
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譲渡価額 ≧ 取得原価:譲渡益が生じた場合、その利益部分は「利益積立金」とされ、資本金等の額の回復は原則として取得原価相当額までです。
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譲渡価額 < 取得原価:損失が出た場合、その損失は資本金等の額の回復に影響しません。譲渡損は原則として損金不算入です。
つまり、譲渡によって資本金等の額が回復するため、将来的には資本金等の額を課税標準とする地方税の均等割や、外形標準課税対象法人においては資本割にも影響するでしょう。自己株式の取得→譲渡がおこなわれると、一見元に戻ったように思われますが、場合によっては自己株取得前と比べて、資本金等の額が増加するケースも考えられますので、みなし配当計算はもちろんのこと、資本金等の額の動きにも留意が必要といえます。
【一日一新】
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