企業買収時の退職金活用

M&Aにより株式譲渡が行われる際、譲渡対象会社の価値に応じて譲渡対価が決まり、買い手から売り手(株主)に対し譲渡代金が支払われることになります。これがオーナー企業の場合、売り手=譲渡対象会社の社長というケースも多々あるかと思いますが、その時に売り手サイドの税効率を高める手法として、退職金を組み合わせるものがあります。
具体的には、上記の譲渡対価相当額の全額を株式譲渡代金として支払ってもらわずに、一部を退職金として支給する前提で、その分差し引いた額を株式譲渡代金とするというものになります。
例えば対象会社株式の価値が5億円とされたところ、1億円を社長(売り手株主)の退職金として支給し、4億円を譲渡代金として支払うということです。譲渡代金が1億円減ってますが、1億円キャッシュアウトが生じる見込みなので、その影響を加味すると株式価値算定上はニュートラルということになります。
この手法は買い手売り手双方にメリットをもたらす可能性があります。まず売り手サイドにとっては株主(社長)の手取り金額を上げる効果をもたらします。株式譲渡部分については、譲渡所得として一律20.315%が売却益に対し課税されます。
一方、退職金として支払われた部分については退職所得として、実質0%~27.5%の間で課税されることとなります。この場合、退職金部分について退職控除等を用いて実効税率を20.315%以下に抑えることができれば、全額株式譲渡した場合と比べて税負担が減少し、売り手の手取り額が増加する効果が生まれます。
買い手にとっては、すべて株式として取得した場合には譲渡代金の全額が買い手の株式簿価を計上することになりますが、役員退職金が支払われた場合はその分が譲渡対象会社の損金を構成し、所得を圧縮する効果をもたらします。
したがって、退職金を組み合わせたほうが、買収後に譲渡対象会社を税効率よく運営できるというメリットが生まれます。
この手法を用いる場合、特に売り手にとっては退職金のところの実効税率計算が肝要となります。細かい計算は省きましたが、退職控除額や、地方税部分の考慮等、適切に試算をしないとかえって手取り額が減るということもありますので、ぜひとも税理士等にご相談いただければと存じます。
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Posted by higuchi